35年くらい前まだ駆け出しの頃、地元の新聞社勤務の方がふらりと工房を訪ねて来られ、本棚が欲しいと言われた。
大きな本棚がご希望で、しかも2階に置くとのことだったので二人で現場を見に行った。
ご希望のサイズ、重さのものでは階段を上げるのが無理なので、
これは完全組み立て式にしなければならないと金太郎は判断した。
材料は入手していた柿の一枚板がいいという事になった。
とてもチャレンジングな内容であった。
入魂の図面が出来上がり丹念な制作を行った。
その依頼主が数年前に亡くなられた。
そしてこの度その息子さんがその本棚を自宅に置きたいと言われた。
今日はその本棚を解体して、息子さんの自宅に移動し、組み立てを行った。
解体していく過程で当時の熱い思いがよみがえって来た。
二人で二階にパーツを運び、二人で組み上げた。
大仕事を成し遂げた達成感があった。
解体作業、組み立て作業は意外と簡単であった。
なぜなら材料と仕口に何の狂いも無かったからだ。
クサビはすんなり抜けて、またすんなり納まって堅固な大棚に戻った。
立ち姿を眺め、あと500年は大丈夫だなと思った。
かくして棚は引き継がれた。
それが何代にも渡ってリレーされていくことを願わずにいられない。



- 2020/03/29(日) 17:58:27|
- 未分類
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0