金太郎と美子のつぶやき

全国にたくさんのファンを持ち、オリジナル組手の分野では世界的に注目されている木工作家、矢澤金太郎と妻美子が、木工生活、田舎生活のなかでのつぶやきをご披露します。作品紹介サイトは kintarosan.com

サヨナラCOLOR

私は特別男まさりの小学生時代を送ったのか、それとも誰しも通らなくてはならない道だったのか、中学に入って間もない頃、今思うと変な体験がある。女を意識することなく、あるがまま、ストレートに生きてきた自分が、セーラー服を着るようになって違和感を覚えるようになった。短かったスカート丈が突然膝まで来て、自転車を乗るのにも以前のようにバ~ッとまたぐわけにいかなくなったし、掃除の時間もパンツ丸見えにおしりを上げて駈けるように雑巾を掛けてはいけなくなった。周りの女の子の中にはそんな服装に似合った、くねくねした女らしい動作をする人が結構いて驚いたりもした。「女」という未知の世界がひたひたと足元から昇ってくるようで、私は不快感を持ち、繭のように私を閉じこめて行くその殻を破りたいような衝動に駆られた。
ある朝教室には誰も来ていなかった。校内にも人影はなかった。理屈抜きの衝動だった。私は一階の教室の外に回り、頭の丈にあった窓に手を掛け、足を肩まであげてよじ登り教室に入るという行動に出た。長いスカートに縛られる自分を解放するようで快感があった。ところが教室の床にトンと降り立って窓の外を見たら、中庭を隔てた向こうの廊下の窓から男の先生がこちらを見ていた。先生がすたすたと私のところにやって来た。「何やってるんだ!君のような生徒は初めてだ!」と言われた。私は身の置き場のない恥ずかしさを覚えたが、先生もどう対応していいのか分からなかったのか、それ以上言うことなく去って行った。

さて、映画の正平君は校舎の屋上の網状の塀によじ登り外側にぶらさがるという極めて危険な行動に出た。それはどんな気持ちからだったのだろう。風采が上がらなくて、どこという取り柄もなくて、好きな女の子の目の端にも留まらないような自分の存在をどこかうち破りたくて、自分を女の子の意識に止めさせたくてそんなことをやったのだろうか。
15年立って医者になった正平君のところに、その初恋の人、未知子さんが患者としてやって来た。思い出してももらえないくらい存在の薄かった自分過去。そして現在も代わり映えのしないどうということのない毎日。
竹中直人は好きでも嫌いでもないが、なんだか気になる人だ。にこにこ笑っていても、おどけていても目はいつも人の心を見透かすように見開かれて、何か怒りであふれているように感じられる。その彼の演じる中年の正平君がだんだんに未知子さんの心をつかんで行く。相変わらず暗い正平君の人生に光がともった。「愛することは長い夜に灯された美しい一条のランプの光だ」とつぶやく場面では、いつもの怖い竹中直人の目じゃなくて細くやさしかったので、やっぱりすごい役者さんだなぁと感じ入った。
  1. 2006/08/29(火) 05:31:06|
  2. 映画、テレビドラマの感想(ネタバレあり)
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